Conversation macpac with friends vol.4
わたしたちが運んでいるものは
Eriko Nemoto 根本絵梨子(写真家)








macpacのバックパックを背負ってニュージーランドのロングトレイルTe Araroa(テ・アラロア)を、約2か月かけて歩いてきました。さまざまな景色や人との出会いや、たくさんのドラマがあり、歩き終えたときにはニュージーランドがますます好きになりました。
わたしが山に興味を持つようになったきっかけは、写真家のアシスタントをしていた頃に幼なじみが誘ってくれたハイキング体験でした。はじめは現実逃避のつもりだったのが、自然のなかで過ごすうちに次第に心が開放されていって、それからは暇をみつけては山へ足を向けるようになったのです。
子供の頃から音楽を奏でたり身体を動かしたりして何かを表現することが好きでした。父親がカメラ好きだったこともあり、子供の頃から一眼レフのカメラでスナップ写真を撮ったりしていました。高校時代は数学や物理が得意だったので、それらの知識を活かせる職種ということで大学では建築を学びましたが、心のどこかにあった写真に対する思いを捨てきれず、写真家になる道を選ぶことにしたのでした。
撮影スタジオとアシスタント時代を経て独立してからも山に足を運び続け、ヒマラヤのランタンや南米のパタゴニアなど、海外のトレッキングにも出かけるようになりました。
海外のトレイルを調べていくうちにテ・アラロアのことを知りました。その名が意味する通り、ニュージーランドの国土を縦断する〝長い道のり〟で、さまざまな起伏に富んだルートと山脈や氷河などの美しい景色が旅人の目を飽きさせない、世界中のハイカーたちが憧れるトレイルのひとつです。
ニュージーランドは、ヒマラヤを旅するときにいろんな海外のトレイルを調べていくなかで旅先の候補にあがっていた国でもありました。街からのアクセスもよく、トレイルは歩きやすそうだし、わたしが好きな湖がいっぱいあるのも好みでした。
テ・アラロアは北島と南島を縦に貫くようにして伸びているルートで、今回わたしが歩いたのはその半分にあたる南島の北端から南端までの1300キロの道のりでした。キャンプ道具と一週間分の食料、そして3台のカメラと50本のフィルムを詰めこんだ、肩にずっしりとした重みを感じるリュックを背負って道なき道を歩いて進んでいくのは容易なことではなかったけれど、歩き始めてから1か月が過ぎた頃から身体も段々と慣れてきて、歩くことを純粋に楽しめるようになっていきました。旅先で出会うハイカーたちは皆ハッピーだし、日々変化する景色を写真に収めるのも楽しいし、いつしかニュージーランドをどんどん好きになっている自分がいました。
旅の後半はゴールするのがもったいなくて、これまで来たルートを逆に歩きたくなる衝動にも駆られました。旅慣れたハイカーが「そういうのをヨーヨーって言うんだよ。もう抜け出せないよ」と教えてくれました。そういう言葉があるくらい、このロングトレイルは魅力的だということなのでしょう。
自然との出会いと同じくらい印象的だったのは旅人との出会いでした。さまざまな国から、それぞれの思いを抱えてこのトレイルを歩きにやってくるハイカーたちとの出会いと別れ。そこにはたくさんのドラマがありました。ときには膝まで泥につかりながら何キロもの道を進むこともあったけど、旅先で仲良くなった友達と共にゴールを目指す愉しさは格別で、これがロングトレイルハイクの魅力なのだろうと実感しながら過ごした70日間でした。
自分が山や自然に何を求めて歩き続けているのかを言葉にするのは難しいけれど、これまで見たことのない景色や、その場に行かなければ感じられない思い。それを写真に収めてみたいという気持ちが、いまの自分を動かしている気がしています。
根本絵梨子(写真家)
2010年より渡豪。2012年富山大学芸術部科学部卒業後、代官山スタジオ勤務。2016年よりフリーランスの写真家として活動開始。現在はアウトドアブランドの広告やファッション、カルチャー誌、建築など幅広い分野で活動している。南米パタゴニアから国内の山々まで、写真を撮りながらアウトドアフィールドを旅する生活を送る。2024年個展開催予定
【今回使用しているアイテム】
Te Araroa 60 テ アラロア60 (color :II)MM62353
Te Araroa 55 テ アラロア55 (color :IW)MM62354